一般診療

春に気を付けるべき口腔ケア:花粉症対策から歯周病予防まで

医療法人社団セントラル第一歯科クリニック 理事長/院長 伊藤慎一

医療法人社団セントラル第一歯科クリニック 副院長       伊藤聰夢

 

春は、花粉症や生活環境の変化などから、お口のトラブルが起こりやすい季節です。

この記事では、春に特に気を付けたい口腔ケアのポイントを、花粉症対策、歯周病予防、口内炎対策など、様々な角度からご紹介します。

歯科医のアドバイスも参考に、春の口腔ケアを徹底しましょう。

 

■花粉症と口腔ケアの意外な関係

■■花粉症による口腔内の乾燥

花粉症の症状の一つである鼻詰まりは、口呼吸を誘発し、口腔内を乾燥させます。

口呼吸により、通常は唾液によって潤されているべき口腔内が乾燥しやすくなります。

唾液には、食べかすや細菌を洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用があります。

乾燥によってこれらの機能が低下すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

さらに、乾燥した状態は、口腔内の粘膜を傷つけやすくし、炎症を引き起こす可能性もあります。

こまめな水分補給や、加湿器の使用などで口腔内の乾燥を防ぎ、また、保湿効果のあるマウスウォッシュやスプレーを使用することも有効です。

特に就寝中は唾液の分泌が減るため、寝る前に口腔保湿ジェルを使用するのもおすすめです。

 

■■アレルギー反応による歯茎の炎症

花粉に対するアレルギー反応が、歯茎の炎症を引き起こすことがあります。

これは、花粉が体内の免疫システムを刺激し、炎症性物質が放出されることで起こります。

歯茎が腫れたり、出血しやすくなったり、または、歯茎に痛みを感じる場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。

歯科医師は、炎症の原因を特定し、適切な治療法を提案してくれます。

抗アレルギー薬の影響で唾液が減少することもありますので、薬を服用している場合は、歯科医師に相談しましょう。

また、アレルギー反応を抑えるために、抗ヒスタミン薬やステロイド薬が処方されることがありますが、これらの薬は副作用として口腔乾燥を引き起こすことがあります。

そのため、薬を服用する際には、口腔内の保湿を心がけることが重要です。

 

■オーラルアレルギー症候群(OAS)への注意

特定の果物や野菜に含まれるタンパク質が、花粉と構造が似ているために、口腔アレルギー症候群(OAS)を引き起こすことがあります。

これは、交差反応と呼ばれる現象で、花粉症の人が特定の食品を摂取した際に、アレルギー症状が現れることがあります。

口の中や唇のかゆみ、腫れ、ピリピリ感などの症状が現れた場合は、原因となる食品の摂取を控えましょう。

重症の場合には、呼吸困難やアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。

症状が軽い場合は、抗ヒスタミン薬で症状を緩和することができますが、重症の場合は、アドレナリン自己注射薬が必要になることもあります。

OASは、特にシラカバ花粉症の人に多く見られ、リンゴ、モモ、サクランボなどのバラ科の果物や、ニンジン、セロリなどのセリ科の野菜で起こりやすいとされています。

 

■■口腔金属アレルギー

その他、口腔金属アレルギーがあります。

口腔金属アレルギーは、歯科治療に使用される金属が唾液によって溶け出し、体内でアレルギー反応を引き起こす状態を指します。

口腔金属アレルギーの症状は、口腔内だけでなく全身に現れることがあります。

特に問題となる金属には以下が含まれます。

  • 金銀パラジウム合金(保険適用の銀歯に多い)
  • 銀合金(詰め物や被せ物)
  • コバルトクロム合金(入れ歯の土台)
  • アマルガム(水銀を含む古い材料)

歯科医に相談して、セラミックやジルコニアなど非金属素材への置き換えを検討しましょう!

 

■春に気をつけたい歯周病対策

■■生活環境の変化とストレス

春は、入学や就職、転勤など、生活環境が大きく変化する時期です。

これらの変化に伴うストレスは、自律神経のバランスを崩し、免疫力を低下させ、歯周病を悪化させる可能性があります。

ストレスは、血管を収縮させ、歯茎への血流を悪くすることで、歯周組織の抵抗力を弱めます。

また、ストレスによって、唾液の分泌が減少し、口腔内の自浄作用が低下することも、歯周病のリスクを高める要因となります。

十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけ、適度な運動や趣味などを通して、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

リラックスできる時間を作る、音楽を聴く、アロマテラピーを取り入れるなど、自分に合った方法でストレスを解消することが大切です。

歯周病予防のためには、ストレスコントロールも重要な要素となります。

 

■歯周病菌の活動が活発化

気温の上昇とともに、歯周病菌の活動が活発になります。

歯周病菌は、暖かく湿った環境を好み、気温が上昇すると、増殖スピードが速まります。

特に、冬の間にケアを怠っていた場合は、歯周病が進行しやすい状態になっている可能性があります。

冬は寒さのため、外出を控えたり、歯磨きがおろそかになったりすることがありますが、春になって気温が上がると、歯周病菌が一気に増殖し、症状が悪化することがあります。

毎日の丁寧な歯磨きと、歯間ブラシやデンタルフロスを使った清掃を徹底し、定期的な歯科検診で、歯周病を予防しましょう。

また、歯周病予防効果のある歯磨き粉やマウスウォッシュを使用することも有効です。

歯周病は、初期段階では自覚症状が少ないため、定期的な歯科検診で早期発見することが重要です。

 

■春に多い口内炎の原因と対策

■■免疫力の低下と口内炎

春は、寒暖差や生活環境の変化によって、免疫力が低下しやすい時期です。

急激な気温の変化や、新しい環境への適応によるストレスは、免疫システムに負担をかけ、免疫細胞の働きを弱めます。

免疫力の低下は、口内炎の発症リスクを高めます。

口内炎は、口腔内の粘膜にできる炎症で、痛みや不快感を伴います。

十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を取り入れるなど、免疫力を高める生活習慣を心がけましょう。

また、ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作ることも大切です。

口内炎ができた場合は、刺激物を避け、柔らかい食事を摂るようにしましょう。

市販の口内炎治療薬を使用するのも有効です。

 

■■ビタミン不足と口内炎

ビタミンB群やビタミンCなどの不足は、口内炎の原因となることがあります。

ビタミンB群は、粘膜の健康を維持するために重要な役割を果たしており、不足すると口内炎ができやすくなります。

ビタミンCは、抗酸化作用があり、免疫力を高める効果があります。

バランスの取れた食事を心がけ、必要に応じてサプリメントなどを活用して、ビタミンを補給しましょう。

緑黄色野菜や果物を積極的に摂取することが大切です。

特に、ビタミンB2は、レバー、うなぎ、納豆などに多く含まれており、ビタミンCは、柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなどに多く含まれています。

これらの食品を積極的に摂取することで、口内炎の予防につながります。

また、ビタミン不足だけでなく、鉄分や亜鉛などのミネラル不足も口内炎の原因となることがあります。

 

■■刺激物の摂取を控える

香辛料の強い食べ物や、熱いもの、硬いものなどは、口内炎を悪化させる可能性があります。

これらの刺激物は、口内炎の患部を刺激し、炎症を悪化させ、痛みを増強させる可能性があります。

口内炎ができている時は、刺激物の摂取を控え、柔らかく、刺激の少ない食事を心がけましょう。

例えば、おかゆ、うどん、豆腐、ヨーグルトなどがおすすめです。

また、熱すぎるものや冷たすぎるものも、口内炎を刺激する可能性があるため、適温で摂取するようにしましょう。

アルコールやタバコも、口内炎を悪化させる要因となるため、控えるようにしましょう。

口内炎ができている間は、できるだけ口腔内への刺激を減らすことが大切です。

 

■春の歯科検診の重要性

春は、新しい生活を始める前に、お口の中の健康状態をチェックする絶好の機会です。

新生活が始まると、忙しさから自分の健康管理がおろそかになりがちです。

歯科検診を受けることで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療につながります。

歯科検診では、虫歯や歯周病のチェックだけでなく、歯垢や歯石の除去、適切な歯磨き方法の指導や、食生活のアドバイスなども受けることができます。

また、歯並びや噛み合わせのチェックも行い、必要に応じて矯正治療の提案を受けることもできます。

定期的な歯科検診は、健康な歯を維持するために非常に重要です。

お近くの歯科医院で定期検診を受けましょう。

デンタルコラムDentalcolumn



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